みんな実は違う。:『か「」く「」し「」ご「」と「』

昨日、全力でボルダリングしたため、ペンを握るのに苦闘しております。そう考えると、キーボードは手に優しいデバイス。ペンのように握らなくていいので。

今日は自分が物語に魅了されるきっかけとなった住野よるの『か「」く「」し「」ご「」と「』という小説について、書いていこうと思う。

か「」く「」し「」ご「」と「 | 新潮社

住野よるという作家は私は非常に大ファンで今まで刊行された全ての作品を購入し、読了した。私が彼を知ったきっかけは『君の膵臓をたべたい』浜辺美波さん主演で映画化されたこともあるので知っている方も多いと思う。自分は高校生の頃にその小説に出会った。きっかけはクラスメイトがそのタイトルの小説を読んでいたからだ。当時あまり読書などハマっていない状況だったためクラスメイトが読んでいるその本を「変な本やな、猟奇殺人事件でも起こんのか」と言ってからかっていた。しかし、内容はそんなことはなく、非常に感動的で切なく苦しい物語。読後には心にモヤモヤしたしこりが残り、無常感に襲われる他とは一線を画す青春小説だった。

『君の膵臓をたべたい』という作品をからかっていた頃、お洒落な梅田の蔦屋書店に立ち寄り、本を適当に眺めていたら、そこに住野よるという文字が私の目の前に現れた。題名は、『か「」く「」し「」ご「」と「』。その本の装丁がとてもきれいで美しかった。すぐ引き込まれて買ってしまいました。いつかさんのイラストは今でも大好きで、作品集も買ったりする。本書を買った後は、その本を蔦屋書店のなかにあるおしゃれなスタバの雰囲気に高校生ながら酔って格好つける中2病ムーブをかます。そんなときもあった。

『か「」く「」し「」ご「」と「』は青春群像劇で連作短編小説というジャンルで学生生活を5人の視点それぞれ変わりながら進んでいく。

登場人物は、明るい性格で素直ないい子のミッキー、天真爛漫でいつもふざけているパラ、内気で賢い優等生タイプのエル、陸上部で絵に描いたような陽気な少年ヅカ、こちらも絵に描いたような内気な男の子の。この五人が物語を展開する。

ちなみに、さっきからこの小説のタイトルにある「」について気になってる方がいるかもしれない。。この「」は各人の人前では言い表せない思いという意味が込められていると私は勝手に考えたりしてしまう。皆さんはどう考えるだろうか。

また、連作短編小説なので、それぞれの視点から学校での出来事が語らレル。これがこの小説最大の魅力といっていいかもしれない。青春真っ只中の十代の若者たちの思いの交差や一致が違う視点から語られることにより、物語世界にたちまち引き込まれてしまう。朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』に共通する部分もある。一般的な青春小説では、一人の視点で物語が進行していくことが多々見られる。しかし、それとは違う叙述形式と、住野よるの描写に感動させられる。

他人の心の読み合いを読者という立場から覗き見できる背徳感と罪悪感を抱えながら、「めっちゃわかるぅぅ!」と感情移入したりすることも。とにかく心が忙しい。

『か「」く「」し「」ご「」と「』は自分が読んだ初めての連作短編小説。だから、これを読んで人によって考え方って違うんだなと当たり前のことを再度身をもって実感した。これも物語のいいところ。他の人の視点から出来事を傍観することができる。もちろん、文字と向き合うだけですが、読み手の感情を揺さぶってくる。その強力な力ゆえに洗脳されたような感覚を覚えるときも。

この登場人物の中では、特にパラが個人的に好きだ。パラは天真爛漫ですが、常に周りに気を配っている。普段は、自由に振る舞っているけど、他人の心の揺れに敏感。天真爛漫に振る舞うのは場の空気を盛り上げてみんなに楽しく過ごしてもらうため。この健気さに勝手に感情移入しまう。

明るく振る舞っている人の暗い部分に私は惹かれる。これがギャップというやつなのか。そのギャップのせいで、その人のことをどんどん知りたくなる。こんなことってないだろうか?自分だけか、

建前のような表面的なトークじゃなくて、飲み会でお互い酔ったときにするような正解のないことを友人と一緒に話すのが好き。なんというか、「どうしたらいいんやろうね、難しいね」って最終的に笑っちゃうような答えのない中で正解を探そうとする会話。

こんな会話を出来る人ってなかなかいないから、というかズケズケ聞くこともできない。その人が大切にしているものが壊れてしまうかもしれない。それが怖い。でも知りたい。

あと、自分と似た存在には同族嫌悪になることもある。もちろん、共感することも多々あるが。特に京くんは自分と重ねてしまうところが多々あった。それはちょっと内気で人の目を気にしているからかもしれない。でも、人の目を気にしてしまうのは自分のためであったりする。京くんはどうなんだろう。

プライドが高いと人の目を気にしてしまうのかもしれない。なめられたくないから、傷つけられたくないから。そのせいか、自分から弱さをさらけ出せる人を見るとすごいなって思う。そういう人は大体いい人です。信頼されている人です。その人を見ていると眩しい。羨ましい。なんでそんなに弱さをさらけ出せるんだろう。私にはその強さはまだありません。 

また、京くんとヅカは音楽で友人関係になった。これも私にとっては大きなポイント。音楽やアニメ、小説などのコンテンツは人をつないでくれる。そんな風に再確認できたシーン。京くんはヅカと性格や友人関係が全く異なるため、音楽の趣味が違ったら仲良くなってなかったんだろうなとネガティブになってしまう。そんなこと気にしなくていいよ!って言ってあげたくなる。そんな甘酸っぱさに溢れた小説。

ミッキーは自分と異なるクラスの男の子に惹かれたり、エルはあることがきっかけで姿を見せなくなったり。

この辺りのことはぜひ本で読んでいただきたい。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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