『the good place』:大事なものって

今回はthe good placeっていうNetflix で配信されてるドラマについて語っていきたいと思う。

だいぶ物語の深いところまで踏み込むんで、ネタバレご注意を。しかし、非常にいい話です。言葉遣いは汚く、面白いドラマですが、考えさせる。

ちなみに、天国のような死後の楽園が舞台なので、そこでは、F*ckといった言葉は悪い言葉なので使えない。これもまた、面白いところ。

このドラマは死後の世界に楽園(=the good place)にきた人たちの物語です。作品の設定では、死後は楽園か地獄のどちらかに送られます。その基準は生前の行いをポイント制で計算した数値によって決まります。

当然、物語が始まるきっかけは同姓同名の地獄に行くはずだったエレノアが楽園に送られるところから始まる。最初、彼女はそれに全く気づかない。しかし、楽園でをついたり、嫌がらせをすると、原因不明の災害が起こる。それにより、彼女は自分の行動が原因で楽園の秩序を乱していることに気づく。

Eleanor Shellstrop: The Good Place Character – NBC.com

その後、よりいい人間になろうと心を入れ替える。そして、楽園のシステムにより、エレノアのソウルメイトと設定された倫理学の教授であるチディと出会う。彼に自分が実は悪い人間だと告白し、良い人間になるためにチディから倫理を学ぶことに。しかし、もともとそれに興味のないエレノアは苦戦する。途中で投げ出したりしてうまくいく様子が全くない。また、うまくいかない原因はチディの優柔不断さにもある。実はチディは選択できない男。パイを選ぶ時にかかった時間は最短で59分。ちなみに、死因も優柔不断が原因。倫理を極めてしまうがゆえに選択できなくなる。

Chidi: The Good Place Character – NBC.com

それだけではありません。楽園にきたはずなのに、エレノアにとっては自慢ばかりしてムカつく存在であるタハニが住んでいた。彼女は生前裕福な家庭で育ち、天才的にマルチな才能を持つ妹のカミラにいつも負けてばかりで劣等感を抱きつつ育つ。妹に負けまいと、善行をしたり、パーティを主催したり、著名人と交流し、社会的ステータスを身にまとい、人々から注目を集めることで承認欲求を満たしていた。ちなみに、個人的にですが、彼女のイギリス英語のアクセントが好き。

ぜひ英語で!

Tahani: The Good Place Character – NBC.com

また、エレノアと同じように間違えて連れてこられたジャニュ(ジェイソン)がいる。彼は楽園のシステムでタハニのソウルメイトとなっている。彼はとある事情で生前に喋らない誓いを立てた台湾の修行僧でいなければならなくなり、口を聞くことは許されない。それゆえ、ソウルメイトと交流を図りたいタハニにとっては非常に悩ましい存在。しかし、実際は非常に頭が弱い。。。これ以上の言及は控えることとする。。。

Jianyu: The Good Place Character – NBC.com

そして、この楽園を事実上全て統べるAIジャネットです。彼女は理性を持った非常に賢いAI。しかし、賢さは全宇宙のデータが設計者であるマイクによってインプットされている。だから、感情等は持たないんですよねえ。しかし、彼女も話数を経るごとにどんどん人間らしくなっていきます。シンギュラリティを超えてしまったよう。

Janet: The Good Place Character – NBC.com

最後に紹介するのが、マイク。楽園の設計者です。混乱していらっしゃるかもしれませんが、この楽園というのはクラスターやガンダムのコロニーのようになっており、複数存在します。それぞれある一定の人口を備え、互いに独立しており、設計者は新たな楽園や地獄を創ることが可能となっている。しかし、マイクは人間ではないので感情を持ちません。

Michael: The Good Place Character – NBC.com

人物紹介はこんな感じ。

突然ですが、大きなネタバレを。

ですが、これは序盤に明らかになるので、基本的には問題ない。このドラマはそれを前提とした上でどうするかというのがミソ。

実はこの世界は地獄なんです。なぜ悪いところかというとこのマイクとジャネット以外の4人欠点だらけだと思われないだろうか。この人間たちは本当に欠点だらけでろくでなし。さらに、マイクも実は悪魔です。人間ではないと述べたが、彼は人間を苦しめることを生業とし、いじめることを至上の喜びとする。

マイクがこの楽園を作った理由は一つ。この欠点だらけの人間を強制的に関わらせることでいじめ、苦しめようとした。しかし、マイクはこの試みに800回ほど失敗する。ちなみに、マイクには人間の記憶をリセットさせる力があります。そのため、それを利用して何度も挑戦しているのです。登場人物たちは記憶が消されていることに気づかない。

しかし、毎回あるところでエレノアが気づいてしまう。

では、なぜバレてしまうのか。それはエレノアが極端に自己中心的な人間だから。いいところにいるはずなのに、自分は苦しい。これはおかしい!!という論理でいつも彼女はマイクの狙いの核心に迫ってしまう。それを恐れ、マイクは何度もリセットする。

これって個人的に、非常に興味深い点だ。なぜなら、ここで楽園とは何かという非常に難しい問題が現れるから。自分に都合がよければ、それでいい世界なのだろうか。それは楽園ではなく、都合のいいぬるま湯でしかない。”楽園”とは何なのでしょうか。

また、ドラマの中には本当の楽園も存在します。何のストレスもなく自由に何でも願いが叶う場所です。しかし、500年ほど本当にいいところに行った人間はいないらしい笑

何かがおかしい… 

のちに、エレノアたちは本当のいいところに行くことになります。しかし、何でも叶う本当のいいところではみんな欲求がなくなり、廃人となってしまいます。その理由はみんなそれぞれ欲求を実現するため、自己中心的で孤立しがちだから。そうして、欲求が充足した後は廃人になってしまう。本当の楽園では、人間関係が存在しない。

これはガリバー旅行記の第四篇 フウイヌム国渡航記を彷彿とさせる。フウイヌムの国は戦争や疫病や悲しみがなく、エリート主義的で官僚的、そして創造性に欠けています。さらに、カースト制度が存在しカーストが上昇することはありません。彼らは非常に知的で理性に基づき、行動するので合理的な行動しかせず、平和な社会を築いている。しかし、全ての行動が理性に基づくため、冷血的で非常に機械的な生活を営んでいます。ここにも、馬同士の関係性は全く存在しない。※フウイヌムは馬です。

本当の楽園は欲求が全て満たされるという点で全くもってフウイヌムとは逆といえるが、一つの行動原理に基づいて生活しているというのは共通して言えるのではないか。また、その行動原理で全く抵抗なく世界が動いている

全く妨げなく暮らせてしまうとやはり面白くないのではないかと思う。また、本当の楽園には終わりがありません。ですので、欲求を新しく生むことは非常に難しい。不便が欲求を生むのかも知れない。だからこそ、欲求には底がないわけだが。

この作品には、不便、ストレスの素晴らしさが描写されている。合理的に生きていても喜びが生まれないことだってある。当然、物事には限度というのがあるので、バランスが大事。これは何にでも言えること。

そんなことを思った。

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